ネット銀行のweb3子会社設立にみるweb3ファイナンスの現状
- Shoichiro Tahara
- 7月6日
- 読了時間: 5分
更新日:9月10日

目次
■はじめに
ネット銀行の中でもソニー銀行がweb3の取組を強化している。ソニー銀行は外貨預金の取扱い通貨の多さや為替手数料の安さなどで知られるネット銀行であり設立は2001年と古く、ソニーグループ傘下のソニーフィナンシャルグループの一翼を担っている。
近年、デジタル分野においてNFT配布キャンペーンやweb3エンタメ領域向けアプリ、デジタル証券検討などweb3周辺領域の取り組みに注力していた同行。5月28日にweb3関連事業を行う100%子会社の設立と25年秋ごろの事業開始を発表、web3ファイナンスの先端を行く取り組みであり関係者の注目を集めている。なぜ、同行はweb3に注力しているのか?銀行業界の中での独自性とともに、同行のweb3戦略や足元のweb3ファイナンスの潮流を取り上げてみたい。
■ソニー銀行のweb3子会社設立
プレスリリース(*1)によると、「ファンとアーティスト、デジタルとフィジカル、法定通貨とデジタル資産が“つながる”世界を利用者へ提供し、web3時代における新たな感動体験と利用者や事業者にとっての収益機会を提供すること」を目的としている。「ブロックチェーン技術などを活用した各種web3事業の企画、実施および支援」を事業内容としており、既にリリースされているweb3エンタメ領域向けスマートフォンアプリ「Sony Bank CONNECT」との連携なども視野に入れている模様。
後述する各種のweb3の取組と並行して、他業銀行業高度化等会社の設立に向けた当局調整など水面下で色々な調整等を行っていたことからも並々ならぬ力の入れようであることが想像できます。
具体的な情報は公開されていませんが、グループのアセットや足元取り組んでいるweb3領域のPoC等のノウハウを活用し、銀行本業である“カネ”の領域だけではなく、ソニーグループの各種IPの“モノ”領域やファンコミュニティなどの“ヒト”領域、またソニーグループ各社が提供する、レイヤー2ブロックチェーン(*2)や暗号資産取引サービス(*3)、NFTマーケットプレイス(*4) などを組み合わせたトータルソリューションの提供でユーザーや関連事業者のweb3事業を幅広く支援していく構想と考えられます。
*2 Soneium(ソニューム)とは、Sony Block Solutions Labsによって開発されたEthereum(イーサリアム)レイヤー2ブロックチェーン *3 S.BLOX(エスブロックス):暗号資産(仮想通貨)取引サービス
■これまでの同行の取組
ソニー銀行はネット銀行の中でもweb3に注力しており、この1年半ほどの間に多様な取組を世の中に送り出しています。メガバンクグループを除くと、web3に関してここまで多方面の取組を行っている銀行は珍しく、ネット銀行の中でも一歩先の取り組みをしている状況でした。
<直近2年の銀行のweb3関連取組> 2025年3月時点 公開情報より当社調べ

〇NFT配布キャンペーン(2024年2月):
ライブ来場者への新たなエンタメ体験を目的にNFT配布キャンペーンを実施 「スナックJUJU 東京ドーム店」 開催記念 来場者限定NFT配布キャンペーン実施のお知らせ
〇web3エンタメ領域向けアプリ(2024年3月):
クリエーター・ファン経済圏拡大への貢献を目的としたweb3エンタメ領域向けアプリリリース web3エンターテインメント領域向けアプリを2024年夏リリース 新サービス名称 Sony Bank CONNECT(ソニーバンク・コネクト)に決定
〇デジタル証券の検討開始(2024年4月):
「貯金から投資へ」シフトの加速を目的に、エンタメコンテンツを裏付け資産とするデジタル証券の検討を開始 ソニー銀行が「いまだかつてない」デジタル資産市場をつくる──“SONYの技術力”の効き目はどれほどか【取材】 | CoinDesk JAPAN(コインデスク・ジャパン)
〇ステーブルコイン実証実験(2024年4月):
web3の領域における安心安全で価値あるサービスの提供を目指してステーブルコインの発行に向けた実証実験の検討を開始 ステーブルコインの発行に向けて実証実験の検討を開始 SettleMintおよびPolygon Labsが開発するPolygon PoSと連携|プレスリリース|ディスクロージャー|企業情報|ソニー銀行(ネット銀行)
■銀行業界の中での独自性
なぜここまで大胆にweb3の分野に投資ができるのでしょうか?2つの理由があるように思います。1点目は、グループ内で多くのIP等、またそれを取り巻くファンコミュニティといったweb3に親和性のあるアセットを多数保有していること。これは他の銀行にはない強みとなるでしょう。2点目はグループ内エンティティの役割配置が明確(*5)で、銀行機能をもつ同行に、魅力的なユースケース創出をはじめとしたweb3ファイナンス(web3における金融領域)の推進機能を集約できているのではないかと推察します。
*5 参考:ソニーグループプレスリリース ブロックチェーンを中心とした包括的なWeb3ソリューションの提供を開始 | ニュースリリース | ソニーグループポータル
■まとめ
足元、web3に係る取組み状況は社会実装に向けて着実に進んでおり 各行ともに注力・注視している領域。通信系のネット銀行はここまで大きな動きを見せていませんでしたが(*6)、住信SBIネット銀行がドコモ経済圏に合流することから今後何らかの動きがあるかもしれません。ソニー銀行とともに動向を注視していきたいと思います。
*6 銀行視点ではweb3が経済圏における顧客獲得の主戦場になっていないことと推察。一方で、グループの他エンティティがweb3領域を推進している事例は存在し、楽天グループにおける楽天ウォレット社や楽天NFT社、SBIグループにおけるSBI VCトレード社やSBIトレーサビリティ社 等があげられる
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